【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
「俺らも行くぞ」
「あうん」
「緊那羅」
裸足で戻ろうとした緊那羅に京助が声をかけた
「ほらよ」
「えっ…」
しゃがんで背中を向けた京助
「おぶされ」
「いいっちゃ私…」
「早くしろ」
「でも;」
「は や く し ろ」
強く言われて緊那羅が躊躇いながら京助の肩に手を置いた
「よっ」
京助が立ち上がる
「ほら行くぞ」
阿分に声をかけて京助が歩き出す
「…京助…」
「んだよ」
「ごめんだっちゃ」
緊那羅が謝った
「…俺の声聞いて駆けつけてくれたんだろ…裸足で」
返事のかわりに京助の肩にある緊那羅の手に少し力が入る
「…ありがとな」
呟くように言った京助
どうしてだろう嬉しいはずなのに苦しくて言葉が出てこない
寝癖頭が何故かもの凄く愛しくて
家までの数メートルの間だけ
緊那羅が京助の後頭部に頭を付けた
「…なした」
「ううん…」
「…風呂場まで連れてってやっから足洗えよ?」
「…うん」
然り気無く距離を延ばしたことに京助自身も気づいていない
「やっぱりイチャイチャしてるあるな」
後ろからそんな2人を見ていた阿分が呟いた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ