【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
あんなに小さくて
あんなに泣き虫だったのに
「…七年…か…」
呟いた竜之助
「大きくなったよ京助君も若も」
柴田が言う
「どんどん成長していつかは親になって…か」
「親ねぇ…」
「年寄りくさい会話だな」
しんみりと言った竜之助と阿修羅に柴田が突っ込む
「親といえば清浄…お前は? こっちにいるなら結婚とかしていいと思うが」
「俺は若がいるからな…お前が京助君たちを守りたかったように俺は若の幸せを守りたくてな」
嬉しそうに清浄が言った
「七年前…お前が帝羅の攻撃から京助を助けてくれたんだろう?」
「…だがそのかわり…緊那羅…いや操が な…まさかあそこで操が京助に駆け寄っていくなんて…帝羅の攻撃に飛び込んでいくなんてな…」
七年前
京助に向かって放たれた帝羅の攻撃
柴田こと清浄は帝羅の攻撃から京助を守ろうと瞬時に京助に向けて保護の術をかけた
それで完全ではないにしろダメージは和らぐ
少しの安堵感の次の瞬間
清浄の術がかかった京助を抱き締めた細い体が京助ごと吹き飛ばされた
狭い背中に直撃した帝羅の攻撃
その光景を思い出した柴田が苦い顔をする
「…京助君がいなくなったら若が悲しむからな」
ぐいっと柴田が麦茶を飲み干した
ドスドスという足音がだんだんと近づいてくる
「何か来たみたい」
京助の机の椅子に座っていた南が言った
「床抜けるんじゃね?」
中島が戸口を見るとすぐ襖が開いた
「よ」
坂田が片手を上げると京助も片手を上げる
「なんか海いくことになったんだけど」
「海?」
「何でまた」
京助が言うと坂田と南が聞き返す
「母さんが昼は海で食うとか言い出して」
「ほほーういいねぇ」
「海なら多少涼しいしねぇ」
坂田と南が立ち上がった
「でも海パン持ってきてねぇし」
中島も立ち上がる
「取りに帰るの面倒くせぇしこれでよくね?」
ぞろぞろと廊下を歩く三馬鹿と京助を追いかけるように聞こえた足音
「京助」
「おっラムちゃん」
緊那羅が小走りでやってくると京助に並ぶ
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ