【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
竜之助を避けて京助が廊下に出た
「…さて…」
竜之助が茶の間を見渡した
「何でこんな集まってるんだ?」
竜之助が茶の間にいた一同に聞く
「何で…って…」
南がちらっと柴田を見る
「さぁ…俺たちは来たばっかりですからね」
柴田が今度はちらっと制多迦を見た
制多迦はへらっと笑い首をかしげる
「え…じゃあなんだお前たち意味なくこんな暑っくるしいとこにいたわけか?」
「や…何か話とかあるんじゃないかとか…思っちゃってた…りして…;」
「話?」
坂田が躊躇いがちに竜之助に言うと
「ないぞ?」
「ないんかい;」
竜之助がさらっと言い切り阿修羅がため息をついた
「麦茶のおかわり…って…竜?」
「お緊那羅」
麦茶のピッチャーを持った緊那羅が竜之助に声をかけると竜之助が笑いながら道を作る
「入らないんだっちゃ?」
「入ろうとしたんだけど暑っくるしいから」
茶の間に入ると緊那羅がピッチャーをテーブルに置いた
「…あれ?」
「京助なら便所」
「えっ;あ…うん」
聞こうとしていたことの答えを先に中島に言われたらしい緊那羅が苦笑いをする
すっと矜羯羅が立ち上がった
「…んがら?」
制多迦が声をかける
「…ここにいても暑いだけだから」
少し汗ばんだ額にくっついていた前髪をかき上げながら矜羯羅が茶の間を出ていった
「どこいっても暑いと思うんだけどなぁ;夏だし」
「まぁこの部屋よりは涼しいだろ;」
「俺らも避難する?」
三馬鹿が避難相談をしはじめた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ