【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
麦茶に入れられた氷がカランと音をたててコップの底に落ちていく
「密度たっけぇ…;」
八畳の茶の間に対して明らかに定員オーバーな人数
「二酸化炭素濃度高いねぇ; 暑い暑い」
南がシャツの首元をバフバフさせながら言った
「もう少し広い場所に移動するとかしねぇのかよ;」
「俺もそう思うんだけど…誰も動かねぇし;」
坂田が言うと京助が麦茶を飲み干して言う
「てか何でみんなここにいるのかわからん」
そういいながら京助が何気に制多迦を見るとヘラリと笑いながら首をかしげた
「やっぱあれか…? 何かこう…重大発表とかあるかんじ?」
中島が言う
「重大発表ねぇ…; 重大かはわからんが…ペットが増えました?」
「ペット?」
氷を口に入れた京助が指差した方を三馬鹿が見た
制多迦があぐらをかいた足の上にはコマとイヌ
その尻尾に埋まって見えたのは阿分
「…狐?」
「ちっせぇ…」
「めごい…」
南がほわ~んと幸せそうに顔を緩ませた
「ムツゴロウ王国でも作る気か?」
「作る気ねぇし;」
京助がガリガリと氷をかじる
「暑いよ」
「そりゃこんだけ人数いるんだもんのー; 仕方ないっしょ」
不機嫌っぽく言った矜羯羅に阿修羅が苦笑いで返す
「どこいくんだ?」
「便所」
「晩御飯までには帰ってきてね」
立ち上がった京助に坂田が聞いて南が茶化す
「体中の水分をオションで出せというか」
言いながら京助が襖に手を伸ばすと襖が開いた
「なんだまだみんなここにいたのか暑くないかこんだけ密集して」
開けたのは竜之助
京助が竜之助を見上げる
「なんだ京助? どうした?」
「便所」
「ちゃんと流してこいよ?」
「わかっちょるわ;」
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ