【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
「…竜…」
自分の中にも【竜】の力がある
その印が色の違う前髪
その前髪を緊那羅が触った
チリン チリン
小さく小刻みに鳴る風鈴の下乾闥婆が雲ひとつない青空を見ている
「沙汰…ごめんなさい…ごめんなさい沙汰…」
小さく謝る乾闥婆の青く大きな瞳には空が写っていた
「私は…ごめんなさい…沙汰…」
乾闥婆の頬を涙が伝う
「乾闥婆」
背中に声をかけられ乾闥婆がぴくっと肩を動かした
「迦楼羅…」
「隣いいか」
「…はい」
振り返らず答えた乾闥婆の隣に迦楼羅が腰を下ろした
「…懐かしい名を聞いたな…」
「…そうですね…」
「沙汰…」
「…いい子でした…」
「ああ…」
静かな会話
静かな風が2人の髪を揺らす
「乾闥婆…」
「迦楼羅…私は…私はっ…」
乾闥婆の肩が震える
「私はあなたの…っ…」
ガサッ
明らかに何かが垣根の草を鳴らした
ハッとして迦楼羅と乾闥婆が顔を向けるとそこには爽やかに微笑む柴田と坂田、南と中島の首から上がこちらを見ていた
「おかまいなく」
「おかまうわッ!!!;」
ハッハと笑いながら4人が言うと迦楼羅が怒鳴った
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ