【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
「とにかく!!」
乾闥婆に聞いていた京助の言葉が母ハルミによって切られる
「朝ご飯食べちゃって!!竜之助も座る!! …阿分ちゃんたちは何か好きな食べ物あるかしら?」
母ハルミが阿分に優しく聞いた
「豆腐ある」
阿分が揃って答える
「はいはい」
母ハルミが笑って茶の間から出ていった
「…つまりは…」
茶の間中の視線が竜之助に集まった
「はっはっは」
「はっはっはじゃないでしょ」
笑った竜之助の頬を母ハルミが引っ張る
「前の【時】の時に阿分を出して…回収するの忘れてた…と」
矜羯羅がちらっと阿分を見て言った
「そうある」
「我らそれからずっと主探してたあるよ」
ちんまい狐の姿のまま阿分が頷く
「はっはっは」
竜之助が笑い母ハルミが今度は無言で頬を引っ張った
「それから…ってことは前の【時】から…?」
「まぁざっと千ン百年くらいになっしょ」
「阿修羅」
いつの間にか茶の間の戸口に立っていた阿修羅がよっと手を上げた
「阿修羅様!!」
「阿修羅様ある!!」
阿修羅の姿を見るなり阿分が駆け出し阿修羅の肩に登った
「久しゅー阿分」
阿修羅の顔にすりよる阿分
「ったくアンタって人はいっつもやったらやりっぱなし出したら出しっぱなし…変わってないわね」
母ハルミが呆れる
「はっはっは」
竜之助がコマイヌを撫でて笑った
「…なんか…竜って想像してたのと違うっちゃ」
ぼそっと緊那羅が言う
「違う…?」
「強い…っていうか要とか聞いてたからもっとこう…偉そうとか…近づきにくいとかいうのかなって…」
「…まぁ確かに強そうって感じはしねぇよな」
京助が緊那羅に同意した
「強そうって言うよりは母さんに尻に敷かれてるし…ユルいし」
鼻をほじりながら京助が竜之助を見る
「京助の…お父さん…なんだっちゃね」
「あー…まぁ…そうなんだろな」
緊那羅も竜之助を見た
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ