「レイコの青春」 28~30
「お勉強のほうは、順調にすすんでいますか?
無理をしてはいけません。
あなたは昼間を働いて、そのうえなでしこで
夜間保育までしているのですから、あせらないでください。
若いとはいえ、無理は禁物です、
後で、かならずたたりますから。」
「私のことよりも、
園長先生こそ、ご自身を大切にしてください。
お見舞いに来たというのに、私の方に心配ばかりされています。
それではまるで私のほうが、病人のようです。」
「あらまぁ、私としたことが・・・
それでどうかしら、保育園の皆さんは?
それぞれお変わりもなく、
皆さん元気に、すごしていらっしゃるかしら。」
「園長先生。
お身体にさわります。
ご自分のことだけを考えてください。
後のことは、わたしたちに任せて、
ここでは、ゆっくりと、静養に専念をしてください。」
「そうですねぇ、
そうなればいいのですが、ねぇ・・・」
園長先生のまっすぐな目が、しみじみとしてレイコの顔をみつめています。
両手で温められている指先へ、さらに添えるような形で
もう片方の手が伸びてきました。
やさしくレイコの指に触れてから、かたわらのテーブルの
引き出しを指さします。
「そこの引き出しに入れてある、ノートを、後で幸子に届けてください。
私だけの、秘密と言える保育園での記録です。
そういえば、あなたもこれからは、保育者を目指す一人です。
何かの参考になれば幸いです、開けて見て。」
言われた通りに引き出しを開けると
何冊ものノートが、綺麗に積まれて置かれています。
作品名:「レイコの青春」 28~30 作家名:落合順平