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 どうしようと思ったが既に遅く――ケイタこと私、蛍子は大いに慌てていた。
(どうしよう、今からいきなり話変えるのも変だって思われるよね? かと言ってほんとに会うなんて無理だし!)
「あぁ…いっそネナべなんてするんじゃなかった…」
 ツイッターを始めたのは友達が勧めくれたからで、私がネットで男を装っている、つまりネナベだということを知っているのはその友達だけだった。ほとんどのネット以外友達はミクシィだし、ツイッターで少しふざけても誰にもバレることなんてないと思ってた。
「…まさかこんな形で危機が訪れようとは…」
 ぼそりと呟いて項垂れる。
 私は居るのは可愛い服が置いてあるお気に入りの服屋さん。大型デパートの三階だ。大型といってもたかが知れてる、もしかしたら本当にアキとすれ違ってる可能性があると思うと、私は慌てるしかなかった。
(と、とりあえず…みゆに電話しよう…)
 自分の行動の馬鹿さ加減に困り果てて、私はひとまずツイッターを勧めてくれたみゆに電話をかけてみた。解決になるかって言われたらならないと思うけれど。ほかにはなにも思いつかなかった。
 みゆはすぐに電話にでてくれて、事の次第を話すと少し考えてからこう言った。
「わかった、今から行ってあげるからちょっと待ってなさい」
「あっ、ちょっとみゆ!」
 みゆが電話を切ってしまった。そして続く着信音。ツイッターを見てみればまたアキからリプライが来ていた。
アキ 『@keita00 今どこにいるの? 私三階で妹に付き合ってウィンドーショッピングしてます。妹ってば色々買い過ぎ(汗)』
(三階にいる…!)
 もう一度言おう。これはほんとに危機だ。
ケイタ『@_aki_ 俺四階で服見てるよ。妹さんの相手大変そうだな』
 そう嘘の返信をした。心苦しいけどバレないようにするためにはこれしかないと思ったからだ。
アキ 『@keita00 へぇ~。そっか』
 帰ってきたリプライはたったそれだけで、ほっとしていいのかいけないのか。とりあえずいきなり鉢合わせとかにならないよう努めなければ…そう思った私はひとまずみゆに今いる場所をメールしてこっそり服を見つつ外を見た。歩いていく人の中にアキが居るかもしれないと思うと緊張してくる。
(歳の近い妹がいるって言ってたから…高校生くらいの姉妹…)
 横目で行きかう人を確かめる。親子連れ、夫婦、恋人、友達と――姉妹といった様子の人はなかなかに道を通らない。
「はぁ…自分ばかだなあ…」
 私ははぁ、と長いため息をついた。




「お待たせ。んで、それっぽい人いた?」
「まだいない…もう、ほんとどうしたらいいんだろ…」
 みゆが到着して、それだけで私はなんだか肩の力がぬけた。しかしみゆは次にあっけらかんとこう言った。
「会いたかったら会えばいいじゃない。私もいるし、心配しなくていいよ? 変なやつだったらぶっ殺す」
「ちょ…色んな意味で冗談になってないよ…」
「冗談じゃないもの」
 さらりとそう言ったのは空手黒帯という実力の持ち主。
「蛍子に指一本触れさせやしないわ」
 にんまりと笑うみゆに私はそうじゃなくてと話を戻しにかかる。
「そうじゃなくて。さっき四階にいるってリプ返したんだけど…」
「え、なにしてんの。もし探されて高校生の男子がいなかったら嘘ついてるって思われるわよ? 男だと思われてるし、ここにいたって普通にバレないのに」
「そっか…! でも思いつかなくって」
「それか、会いたくないならいっそ帰りましょ? 買い物ならまた私が明日にでも付き合ってあげるわよ? 今日は急いできて全然身支度出来てないからあんまり外にいたくないから、一度帰って出直すなら今日でもいいけど」
「さすがにそこまでみゆにしてもらうのはあれかなって思うし…その」
「なに?」
「…会いたくないわけじゃ、ないんだよね」
「ほう」
 そう、どちらかといえば、私はアキに会ってみたかった。前々からずっと気になっていたから。これだけ話が合う人なんて滅多にいなくて、普通に電話や会って喋ってみたらどうなんだろうと思っていたのが事実。
 それでも、性別を偽ってるのが難点で、どうにも一歩踏み出せなかった。
「なら、話は早いじゃない」
 みゆは楽しそうに目を輝かせ、人差し指をぴんと立てて言った。

「それじゃ、会ってみようじゃないの」



作品名:mistake! 作家名:紅月 紅