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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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妖狐

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<妖狐>

 仲間数人でハイキング来たのだが、一人だけはぐれて道に迷ってしまった。低い山だと侮ったのがいけなかったのだろう。
 うろうろと歩き回ってすっかり方角も見失った。生憎の曇り空で日の落ちるのさえ気がつかなかった。
 そうこうするうちに足は棒の様になり歩く気力も萎えてしまった。
 途方に暮れた私は道端に腰を下ろしすっかり暗闇に沈む遠くの山並みを眺めていた。
 ふと気がつくと十歩かそこらの向こうで一匹の狐がすっくと立ち上がってこちらを見ていた。
 すっかり暮れ落ちているにも関わらず、狐色の毛並みがまるで光を放っている様に鮮やかだった。
 どれくらい見詰め合っていただろう。
 やがて狐は『付いて来い』とでも云う様に踵を返して数歩遠ざかった。
 私が思わず立ち上がると狐は一度立ち止まり、振り返って私を見ると又、前を向いて歩きだした。
 私はこれが狐に化かされる、という事かと訝しがりながらも、好奇心には抗うことは出来ずにとぼとぼと狐の後ろを付いて行った。
 狐は度々振り返っては、私が居るのを確認して又歩くのだった。その表情には喜怒哀楽と云う様なものは見受けられないが私には満足そうな顔をしている様に思えた。
 初めは気がつかなったが、狐の白い尻尾の先がほんのりと明るく灯っており、私の足下を照らしている。道理でこの暗闇の中でも石ころに躓いたりしない筈だと一人で合点がいった。
 しかし、これはいよいよ化かされたな、という思いも益々強くなった。
 随分歩いたような気もするし、さして歩いていないような気もする。私はすっかり足の痛みも忘れて雪洞の様な狐の尻尾に魅入られていた。
作品名:妖狐 作家名:郷田三郎(G3)