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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第十四回・参】*あいのうた*

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「なぁ…」
膝を抱えた坂田が白いワイシャツ姿になった清浄こと柴田に声をかけた
傷こそは消えたものの力の消費量が酷かったらしい柴田は折りたたんだ座布団を枕に横になっていた
「なんです? 若」
「…なんでもねぇ…」
坂田が膝に顔をうずめる
「若…」
「うるせぇ」
「泣かせ…まし た?」
上半身を起こした柴田が坂田を見る
解けた髪が膝に埋めた顔をカーテンのように隠している
でもその肩は震えていて小さく鼻を啜る音が聞こえた
「わ…」
「若っていうなッ!!」
坂田が怒鳴る
「親父も昔【若】だったんだろ」
「え…?? あ…そうですけど」
坂田が鼻水を啜り一呼吸をする
「若って呼ばれるたび…親父の代わりみたいな気分になる…俺は親父じゃねぇ」
「……」
「俺は俺なんだ…お前がッ…お前に【若】って呼ばれると親父の代わりなんだって…ッ…」
坂田の嗚咽がだんだんと大きくなる
「俺はッ…お前がしょうなんたらだろうがなんだろうが…ッ柴田だからッ…俺にとってお前は柴田でしかないからッ…!!」
咳き込みながら言う坂田の肩に柴田がそっと触れた
「すいません…」
それからゆっくりと坂田の頭をなでる
熱い息がこもっているからなのか少し前髪が湿っている坂田
「柴田…」
「あ…はい」
嗚咽を抑えながら柴田を呼ぶ
「俺は誰だ?」
くいっと引っ張られたワイシャツ
柴田がそれを見て微笑む
「深弦君…でいいですか?」
「ばーか」
間髪いれずに返ってきた言葉に柴田が苦笑いになっていると坂田が顔を上げた
「君ってガラじゃねぇよ」
「え…でも」
「でもじゃねぇ 俺がそういってんだ【柴田】!!」
目を腫らして鼻水を出して涙を流したままの坂田の顔
「…変わりませんね…貴方は」
「うるせぇッ;」
ワイシャツの袖口で坂田の鼻水を拭き取った柴田が笑う
「ありがとうございます…深弦」
「ッ…」
いきなり名前で呼ばれた坂田が驚く
「やっ…やっぱナシッ!!; 若でいいッ!!; いやッでもッ;」
「ははははっ」
「笑うなッ!!;」
真っ赤になった坂田が柴田の足を蹴った
「あっれー柴田さん大丈夫なの?;」
「うぉうう!?;」
いきなり部屋に入ってきた中島と南に坂田が驚いて壁に頭をぶつける
「なにしてんだおまへ…;」
「入ってくんなら入ってくるっていえッ!!;」
呆れながら中島が言うと坂田が怒鳴った
「お邪魔します」
「遅いわッ!!;」
南がお辞儀しながら言うとまた坂田が怒鳴る
そんな三人のやり取りを柴田が微笑みながら見ていた