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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第十四回・参】*あいのうた*

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チリンと鳴った風鈴
風鈴を揺らした風が運んできた匂いに迦楼羅が顔を上げた
「なんだこの匂い…」
「匂い…?」
乾闥婆も顔を上げる
「…乾闥婆」
迦楼羅が乾闥婆を呼ぶ
「…はい…」
返事をした乾闥婆が真っ直ぐ迦楼羅を見た
「ワシは…お前…は…」
乾闥婆の肩を掴む迦楼羅の手に力が入る
「…お前は…幸せ…か?」
チリリと小さく鳴った風鈴
「はい」
乾闥婆が微笑んで頷いた
「本当にか…?」
「はい」
「本当に…本当にか?」
「はい」
何度も聞き返す迦楼羅
「ほん…っだっ;」
「しつこいですよ」
その迦楼羅の前髪を乾闥婆が引っ張った
「何をするたわけっ!!;」
「あなたがしつこいからです」
「っ…;だ…だってだなっ!!;」
「僕は…」
乾闥婆が迦楼羅の髪から手を放した
「あなたの隣にいることが幸せなんです」
「…乾闥婆…」
迦楼羅の眉が下がる
「ありがとう…ございます迦楼羅」
「……」
乾闥婆の肩にあった迦楼羅の手に更に力が入ったかと思うと思い切り乾闥婆を抱き締めた
「か…」
「乾闥婆ワシはまだ…ワシは…」
「…迦楼羅…僕は乾闥婆です…」
静かに言った乾闥婆に迦楼羅が唇を噛んだ
「…すまん…」
乾闥婆を放した迦楼羅
「鳥類? って乾闥婆も起きたのか」
「だぁっ!!?;」
いきなり京助が声をかけてきて迦楼羅が慌てる
「なっ…;」
「ええ…ご心配お掛けしました」
慌てる迦楼羅とは反対に落ち着いた様子の乾闥婆が京助に返す
「飯できたから食いに行け」
「ありがとうございます」

ぐきゅうぅー…

タイミングがいいのか悪いのか迦楼羅の腹の虫が鳴いた
「…はよ行けや…?」
そう言って京助が引っ込んだ
「行きましょうか」
「…うむ」
立ち上がろうとした乾闥婆の前に差し出された迦楼羅の手
「乾闥婆」
「…はい」
乾闥婆が手を乗せると迦楼羅が微笑んだ