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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第十四回・参】*あいのうた*

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「お腹すいてないっちゃ?」
「…へっ?」
茶の間の入り口に立った緊那羅が振り返って茶の間の面々に聞く
「ま…まぁ腹は減ってる…けど」
京助が答えると南と坂田が頷いた
「ハルミママさんがたしか晩飯作ってたはずだっちゃ」
「…で…?」
「ちょっと遅くなったけど晩御飯にするっちゃ」
にっこりと笑った緊那羅
「慧喜」
緊那羅が慧喜に声をかけた
「手伝ってほしいっちゃ」
「え…っ?」
慧喜が驚いている
「僕も手伝うっ」
悠助がぱたぱたと駆け足で廊下に出た
「ほらっ慧喜ー」
「あっ…」
途中から足音が二つになり遠ざかっていく
「…緊那羅」
矜羯羅が声をかける
「ありがとう」
そしてお礼を言った
その隣では制多迦がへらりと笑っている
「…なかがすくと…イライラするって悠助が前言ってた」
「そういえば言っていたね…」
矜羯羅が思い出して微笑む
「まぁたしかに腹減るとイライラはするよな」
中島がうんうん頷いた
「んじゃ俺母さんとと…父さん呼んでくっかな」
京助が立ち上がった
「んで誰か鳥類とか…」
「おいちゃんががいく」
烏倶婆迦が立ち上がりくいくいっと帽子を直し歩き出した
トタトタと烏倶婆迦が廊下を小走りで縁側のある部屋の前までやって来た
襖を開けると迦楼羅と阿修羅が顔を上げた
「烏倶婆迦…?」
「ご飯だよ」
「…呼びにきてくれたんかばか」
「烏倶婆迦だっ!!」
キーキーと地団駄をふむ烏倶婆迦
「はははは」
阿修羅が笑う
「…乾闥婆は?」
「ここだ」
迦楼羅が少し体をずらすとそこには乾闥婆が丸くなって寝息を立てていた
「乾闥婆…寝てるの?」
「ああ…だからワシが側にいるお前たちは…」
ぐぅうー…
迦楼羅の言葉を迦楼羅の腹の虫の声が遮った
「かるらん…オライがみちょるけ…飯食って…」
「おいちゃんがいる」
阿修羅の言葉が終わる前に烏倶婆迦が乾闥婆の側に座った
「おいちゃんが乾闥婆の側にいる」
「いやワシが…」
ぐきゅううー…
再び鳴いた迦楼羅の腹の虫
「おいちゃん乾闥婆が好きだ」
「なっ…?!;」
「ほっほー…」
驚いた迦楼羅とあれまーという顔をする阿修羅
「乾闥婆…ハルミと同じ匂いがする…優しくて強くて柔らかくて だからおいちゃん乾闥婆が好きだ」
「…だってさかるらん」
固まった迦楼羅を阿修羅がつつく
はっと我にかえった迦楼羅が烏倶婆迦と乾闥婆を見た
「ライバル…かねぇかるらん」
「なっ…やっ…やかましいわッ!! たわけッ!!;」
「乾闥婆が起きるよ?」
怒鳴った迦楼羅に烏倶婆迦が言うと迦楼羅がぐっと口をつむいで座る
「なぁばか…だっぱってどんな匂いなんだ?」
「いい匂いだよ」
「…だとさ」
「やかましいッ!!;」
阿修羅が迦楼羅をからかう
「乾闥婆が起きるよ」
「……;」
またぐっとなった迦楼羅を見てクックックと笑う阿修羅
「だからおいちゃんが乾闥婆の側にいる乾闥婆が好きだから」
「おーおー…言うねぇばか」
顔をひきつらせて堪えている迦楼羅を横目に楽しそうな阿修羅
「…乾闥婆?」
「…ぼ…くは…」
うっすら目を開けた乾闥婆
「乾闥婆…だい」
「大丈夫? 乾闥婆どこか痛い?」
迦楼羅より先に烏倶婆迦が乾闥婆に言うとそれを見てまた阿修羅がまた笑う
「烏倶婆迦…? あ…迦楼羅と阿修羅…僕は…」
乾闥婆が起き上がると迦楼羅が側に寄った
「…乾闥婆」
「迦楼羅…僕は…」
まだ赤い目の乾闥婆を見て迦楼羅が俯く
「け…」
「ほいほい! 飯だ飯だー」
阿修羅が烏倶婆迦を小脇に抱えて立ち上がった
「放せっ!!放せってっ!!おいちゃんは乾闥婆とっ!!」
じたばた暴れる烏倶婆迦を阿修羅が連れていく
ぽかんとしている乾闥婆の頬についていた髪の毛を迦楼羅が取った