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女郎蜘蛛の末路・蜘蛛捕り編(後)

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しかし、ここからではその人物の姿はまったく見えなかった。
だが、それでも構わない。苺春の姿を確認出来ただけで十分だった。
へえ、今日はお友達も連れてきてくれたん。一体苺春はんのお友達って、どんな人なんやろ。苺春はんのお友達やから、やっぱり立派な人なんやろなあ。
八重の脳裏に、勝手に明るい笑みを浮かべる、ハンサムな好青年の姿がイメージされる。
しかし、それはイメージだけに留めておきおき、当然ながらわざわざ顔を確認に行きはしなかった。
顔なら、後の案内の時にいくらでもみられる。そう、いくらでも。
もうすでに、八重の頭の中では苺春とそのご友人を席まで案内するのは自分の役目だと決まっていた。
名前の記入された用紙を開き、彼の順番があとどれくらいなのかを確認する。
……なるほど、あと6番目か。
苺春の直前の客の名前を頭の中にインプットすると、八重は用紙を元の位置に戻し、クルリと向きを変えると翔太たちの方へと戻った。
苺春の名前が呼ばれるまでにはまだ時間がある。それまでさっきの話の続きを聞いていよう。
翔太たちの座る席に戻ると、彼らは商品のお品書きを見て、あれにするかどれにするかと話し合っていた。
どうやら、注文する商品を決めているらしい。
「なに見とんの?」
と、八重が覗き込むと、綾子が「ビックリしたあ……」と言いながら飛び上がった。それをからからと笑う翔太。
「……もう、八重さん脅かさないでくださいよう」
「あははっ。かんにんかんにん。そんなつもりじゃなかったんよ。ごめんね」
そう、八重が謝罪の言葉を口にすると、綾子は「あ……いや、別に謝ることじゃなくて……」ともごもご口ごもってしまった。
ふふ……やっぱりかわええ娘やなあ。
綾子の行動を見て、八重はつい口元が緩んでしまうのを感じた。