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海野ごはん
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ギャンブラー物語

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「マスター勘定してくれ。ここはモモのおごりだ」
「おや、どしたの?今日は早い帰りだね」
「早くね~よ。もう朝方じゃないか。マスターもこんな商売してると早死にするんじゃね~か」
「馬鹿野郎、遅く寝て遅く起きるのがジャズメンなんだよ!」
「まっ、確かに。健康なジャズ好きな奴はいない・・・」
さっきまでポーカーをしていた他のメンバーは、もういなかった。
「お~いモモ。付き合ってもらうぞ」
「どこに行くのよ?ホテルは嫌だからね」
「ば~か、おばさんの体なんていらね~よ。モモは休みは取れんのか?」
「なによ・・明日も引きずりまわす気?」
「あ~、おまえならすぐ休みも取れるし、待ってる奴もいないだろ」
「失礼ね。その通りだけど・・負けの代わりに何をさせる気?」
「付き合ってもらうだけだ。体はいらない。多分おまえは喜ぶ・・・」
「なによ、それ?」
「とにかく、ここを出よ。あいつが聞いてる」
優作が向いた方向にはマスターがニヤニヤしていた。
「マスター・・しばらく来ね~からって心配すんなよ。後で報告してやる」
優作とモモは狭いエレベーターに乗り込むと1階のボタンを押した。
9月の夜はまだ昼間の熱が残っていた。深夜タクシーは数珠繋ぎに歩道に並んでいた。
「ねぇ~どこ連れてくのよ?」
「まず、飲もう」優作はモモの手を取り足早に歩いた。

狭い路地を3つほど曲がると白いビルの地下への入り口に着いた。
看板はない。地下に降りると壁に金属の文字でBLACK JACKとだけ貼り付けてあった。
ショットバーだった。店内には3人の客がいる。
優作はBOX席にモモを座らせるとジンライムを注文した。
モモはディタスプモーニ。
ライチリキュールにグレープフルーツを絞り込みトニックソーダで割った女性に人気のカクテルだ。
「どこに連れて行く気?おもしろいとこ?」モモが聞く。
「パスポートはあるか?」優作が聞く。
「家にはあるわよ。海外? へ~面白そうじゃん。どこ?」
「ラスベガス・・・」
「えっ~~~~うっそ~」
「うれしいだろ・・。付き合ってくれ・・・」
「行く、行く・・もちろんタダだよね」
「あ~」
「やった~・・ギャンブル?」
「それもあるが、娘の結婚式だ」優作は照れくさそうに言う。
優作には25歳の娘がいた。
海外留学のまま住みついて向こうで男が出来たらしい。
ベガスでレストランをやっている男だそうで、そこそこの金持ちだそうだ。
航空券代も出してくれるそうだ。
「どうせタダだから彼女も連れて来ていいよ」と言いやがった。
優作は娘の話になると照れる。

「で、何であたしなのよ?」
「ギャンブル好きだろ?」
「好きよ。それだけであたしなの?」
「ああ・・おかしいか?」
「・・・・嫌、別に・・・あんたの彼女になるの?」
「形だけさ。目的はギャンブルだから」
「ふ~ん、まぁいいか。それで、いつ行くのよ?」
「今日・・・」
「はぁ~~~?」
「行けるだろ?おまえなら・・」
「・・・・・すごいね、あんたって・・・いつ決めたの、あたしって」モモは驚いた表情で聞いた。
「さっき。ハートのクイーンが出た時」
「はぁ~・・・?」
「直感」
「ばっかじゃないの・・・」
「俺は直感で生きてる」
モモは優作の顔をまじまじ見た。本当に馬鹿じゃないのかと疑った。
「私は今日ボロ負けで、運なんかないのにベガスに連れてってギャンブルするぅ~?ナニ考えてんだかこの親父。なんか下心あるんじゃないの?」
優作はモモの顔を見ると首を横に振った。とぼけた男だ。
ここでもポーカーフェイスをしていた。
「いいわ。乗ったわ、その話。おもしろそう」
「あのさドレス持ってるか?」
「あるわよドレスくらい。結婚式の時のでいい?」
「ばかっ、もう入らねえ癖に・・・あんのか?」
「う~~ん、多分あると思う。カラオケステージ用が」
「カラオケ?」
「うん、八代亜紀みたいな派手な奴がある」
優作は想像してみたが、紅白歌合戦しか思い浮かばなかった。
「まあ、いいか。じゃそれ持ってきて」
「着なきゃいけないの?」
「あ~そうしてくれって。ドレスコードがあるんだそうだ」
「ふ~~ん」モモはまさかあのドレスをアメリカで着るとは思わなかった。
なんだったら向こうでカラオケでも披露してやるかと考えた。

作品名:ギャンブラー物語 作家名:海野ごはん