【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり
「か…」
「鳥類…ッ!?;」
「…邪魔した か?」
襖を開けたのはいいものの京助と緊那羅を見た迦楼羅が聞く
ハッ とした京助が慌てて緊那羅から離れた
「あ…え…っと; どうしたんだっちゃ? 迦楼羅…乾闥婆は?」
京助に掴まれてよれよれになっていた服を直しながら緊那羅が聞き返す
「乾闥婆は阿修羅に頼んできた」
「そう…」
「それよりも京助」
「んだよッ!!;」
赤い顔赤い目をした京助が怒鳴る
「手を出せ」
京助に近づきながら迦楼羅が言った
「手…?」
「早くせんかッ!! たわけッ!!」
なかなか手を出さない京助の手を迦楼羅がひっぱって何かを手渡した
「何…ってこ…鳥類これ…」
「迦楼羅これ…宝珠…」
京助の掌には赤い宝珠があった
「これで…動くのだろう?」
「え…」
「悠助を泣かせたくないのだろう?」
ふっと迦楼羅が笑う
「ほら!! さっさとしなければ悠助が風呂から上がってくるではないか!!」
「あ…ああ」
迦楼羅が急かすと京助がヒマ子さんの傍にしゃがんだ
「迦楼羅…あの宝珠って…」
迦楼羅が緊那羅を見てまたふっと笑う
「いいのだ…ワシはこの罪があるから乾闥婆といられるのだからな」
「迦楼羅…」
「ワシはな緊那羅…幸せだぞ」
「へ…?;」
唐突に言った迦楼羅の言葉に緊那羅がきょとんとする
「今のままで…な充分幸せだ。これ以上は望まん…今のままでいい」
そう言った迦楼羅の顔は穏やかだった
「皆がいる何気ない日々があればそれで」
「…そう…だっちゃね」
迦楼羅につられたのか緊那羅の顔もほころんだ
ぐきゅうううう……
「…迦楼羅…;」
「おま…;」
久しぶりに聞いた体に似合わず豪快な迦楼羅の腹の虫の声に京助と緊那羅が揃って溜め息をついた
「しっ…しかたなかろうッ!!;」
それに対して迦楼羅が怒鳴る
「感動のシーンだったのになぁ…お前…」
「やっ…やかましいわッ!!; たわけッ!!; いいからさっさと宝珠を埋めんかっ!!;」
ヤレヤレと両手を上げたリアクションをする京助
「お前だってさっき…ッ」
「だーーーーーーーッ!!!!; わかったッ!!; 埋める埋めますハイ!!;」
「さっき緊那羅…っ」
「わーーーーーーッ!!! だーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!;」
迦楼羅が何か言おうとするたびに京助が大声を上げて阻止する
「…やかましいっちゃ…;」
緊那羅が呆れ顔で呟いた
作品名:【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり 作家名:島原あゆむ