【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり
鼻水を啜る音
小刻みに吐き出される熱い息
ときたまあがる声
ぐしゃぐしゃに掴まれた服
少し固めの京助の髪が緊那羅の頬あたる
緊那羅が京助を抱きしめたままヒマ子さんの方を見た
いつもならこんなところ見つかったもんなら断末魔のような悲鳴が家中に轟いている
「…っ…く」
京助が小さくしゃっくりをあげた
ぎゅっと唇をかんだ緊那羅が大きく息を吸い込む
そして唄を歌いだした
あの唄
子守唄にも聞こえるあの唄
柔らかく暖かく優しく何かを守るような唄
緊那羅の歌う唄が廊下にも流れた
「…これは…緊那羅か」
襖の前に立った迦楼羅が襖を見上げそして手の中の宝珠を握る
スパーーーーーーーンッ!!!
勢いよく開いた襖に目を丸する緊那羅と思わず顔を上げた京助
作品名:【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり 作家名:島原あゆむ