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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり

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縁側に面した部屋の隅で丸くなっている乾闥婆をただ黙って迦楼羅が見ていた
どれだけ泣いたのか目の回りが赤くなり髪の毛が顔にくっついている
その髪を迦楼羅がそっと取ってやる
乾闥婆からは静かな寝息がしていた
「…」
弱い風が迦楼羅の触角のような前髪を揺らす
風鈴は鳴らない
迦楼羅が握っていた手を開くとその手の中には赤い宝珠
沙羅からもらった赤い宝珠
その宝珠と乾闥婆を交互に見た迦楼羅がまた宝珠を掌に収めぎゅっと握る
「かるらん」
「…阿修羅か」
伸びた髪をひとくくりにした阿修羅が縁側から部屋に入ってきた
「だっぱ…おちついたみたいやんに」
「ああ…」
阿修羅が少し離れたところに腰を下ろす
「他の者はどうしている…?」
「ワンコ達は竜とハルミ母さんが見てる。タカちゃんとがらっちょは慧光と鳥倶婆迦がみてるし…清浄はメガネ達と一緒に居る。悠助は慧喜と風呂だ」
「…京助と緊那羅はどうした」
名前の挙がらなかった二人を聞いた迦楼羅
「…向日葵の…姉さんのところ」
「ヒマ子さんか…」
「…動かなく…なっちまったから…な」
阿修羅の言葉の後迦楼羅が手を開いた
「…!! かるらんそれ…」
迦楼羅の手の中の宝珠を見て阿修羅がずずいと迦楼羅に近づいた
「…沙羅が…な」
「沙羅嬢が…?」
迦楼羅が乾闥婆を見ると目を細める
「それ使ったら…かるらん…元にもどれるんじゃないん…?」
「…そうかもしれん…が…」
迦楼羅が自分の上着を外し乾闥婆の体にかけた
「ワシだけが…罪を許されてはいかん…」
「かるらん…」
「この罪は…な」
ふっと笑って迦楼羅が立ち上がる
「ヒマ子さんは奥の部屋だったか」
「あ ああ…確かそうやんきに」
「乾闥婆を頼む」
そう言うと迦楼羅が部屋を出て行く
その後姿を見送った阿修羅が乾闥婆を見るとやるせない顔をした
「【時】…もし今度来る【時】が最後になるとしたら…最後に出来るとしたら…」
チリーン…

風鈴が鳴った