【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり
「迦楼羅!!!」
光が消え行く中で乾闥婆の声が響いた
そしてズシャっという何かが濡れた地面に落ちた音
「上!! 上ッ!!」
ワンテンポ遅れて指徳の声
ここでようやく目が開けられた京助達が見たのは乾闥婆に抱かれている迦楼羅と指徳に抱き起こされている帝羅だった
どうやら帝羅は迦楼羅の光の矢をまともに受けたらしく膝を付いていた
「迦楼羅…ッ」
「力を使いすぎだよ…あんなに使ったら僕らだって」
「…とは僕たちが」
小さくなった迦楼羅を抱く乾闥婆を帝羅から隠すように矜羯羅と制多迦が立つ
「やか…ましいわ; たわけ;」
「たわけはあなたですッ!!!」
張り上げた乾闥婆の声は震えていた
「あなたはっ…あなたはどうして…ッ」
「…守りたいものを守りたかっただけだ」
ボソッと言った迦楼羅が乾闥婆の頬に手を伸ばした
「ゴホっ;」
「迦楼羅ッ!」
大きく咳き込んだ迦楼羅の背中を乾闥婆がさする
「…るら…無理しすぎ」
「や…かましい…ッ」
ヒューヒューという呼吸で迦楼羅が制多迦に返す
「迦楼羅…」
「そんな顔をするな。ワシなら大丈夫だ」
「そんな顔にさせたのは君なんじゃないの?」
矜羯羅が突っ込む
「…んがら…!!」
制多迦に呼ばれ矜羯羅がハッして羽衣を翻した
ヨロヨロと立ち上がった帝羅を指徳が支える
乾闥婆は帝羅を睨むと迦楼羅を抱き寄せた
「上…」
「僕様は…僕様はぁッ!!!!」
ゴゥッ
と帝羅の周りに強風が巻き起こり指徳がはじかれた
迦楼羅を抱く乾闥婆を矜羯羅と制多迦が壁になり強風から守っている
「あ…」
京助が何かに気付いた
「京助?」
そんな何かに気付いた京助に気付いたのは緊那羅
「あいつ…」
京助が見ていたのは帝羅だった
「どうしたんだっちゃ?」
「あいつ…」
「京助!!」
言いかけた京助が竜に呼ばれ言葉が止まった
「今の光…」
「迦楼羅だ」
「え?」
母ハルミの胸から身を放した鳥倶婆迦が言った
「迦楼羅の力だよ」
くいくいと帽子を直した鳥倶婆迦がお面をつけようとするとそれを母ハルミが止めた
「またそのお面つけちゃうの?」
「…笑ってほしいから…おいちゃん今まだ笑えないからだからつける」
そう言った鳥倶婆迦の目からはまだ涙が流れていた
「うぐちゃん…」
「おいちゃんみんなが好き笑ってるみんなが好き…おいちゃんが笑ってればきっとみんな笑うから」
お面をつけた鳥倶婆迦がいつもの笑顔で母ハルミに言うと母ハルミが鳥倶婆迦を抱きしめた
作品名:【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり 作家名:島原あゆむ