【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり
「慧喜を返して!!」
悠助が指徳に向かって叫ぶとふっと指徳が笑う
「返すもなにも…慧喜は自分から私の呼び掛けに答えてきたんだよ? 義兄様が憎い、悠助を独り占めしたいのに義兄様が邪魔って…ねぇ?」
「う…」
ぐいっと慧喜の髪を引っ張り上げ指徳が慧喜を言う
小さく声を上げた慧喜の顔が歪んで目から涙が流れた
「え…き…っ…慧喜を泣かせたなっ!! 慧喜を返せっ!!」
それを見た悠助がまた叫ぶ
「好きな女の子を泣かせられちゃあ怒るよな、よしよし正しいぞ悠助、さすが俺の子供だ」
「おま…」
うんうん頷きながら悠助の頭を撫でる竜に京助が呆れた
「なんつぅか…京助の親父さを…だよなぁ」
「この父ありてこの子ありってかんじ?」
中島と南が妙に納得して親子の会話やり取りを見る
ドォン!!!!
また聞こえた爆音に一同が振り返った
崩れた瓦礫を蹴飛ばす音
上がった土煙から見えた白い布
「上…」
指徳が少し顔をほころばせて名前を呼ぶ
「…帝羅」
「ふん…やっぱりお前か、竜」
ばさっと髪と布を後ろにやりながら帝羅が竜を見た
「矜羯羅様っ!!」
土煙の向こうから叫びに似た慧光の声が聞こえ慧喜がぴくっと反応してうっすら目を開けた
「慧喜!!」
「ゆ…うすけ…俺…ごめんね…ごめんね…」
「ふん…」
絞り出すような声で謝る慧喜の髪を床に叩きつけるように指徳が離す
這うようにして慧喜が伸ばした手を悠助が掴んだ
作品名:【無幻真天楼 第十四回・弐】ひまわり 作家名:島原あゆむ