二人の王女(2)
いつものようにベッドに入って眠っていたのが、ふっと気配を感じてあすかは目を覚ました。時計を見るよりも先に、部屋の隅がなにやら明るいことに気がついた。
―――何だろう…?
その光に吸い込まれるように、あすかは明かりの灯る方へと恐る恐る歩み寄った。明かりは、鞄の中から漏れているようだった。鞄を開けると、ポケットと、中に詰めたままにしてあった本の一冊が光を発していることに気付いた。
「なに…これ?」
ポケットを開いてみると、それは昼間に見つけた、あの紙の包みだった。そうしたら…と、光る本を取り出してみると、案の定その紙の包みが入れてあった、あの得体の知れない文字の綴られた本だった。
思わず身震いを感じ、一瞬その本を鞄共々に突き飛ばした。しかし、光はおさまるどころか、一層の輝きを増していく。
「お…お母さん…」
怖くなって、声を出してはみるものの、緊張と恐怖のせいか、隣室で眠る両親を呼ぶほどの大きな声が出ない。
そのときだった。
「アズベリーの血を引く者」
低い男の声が、部屋に響いた。あすかは、思わず、周囲を見回した。しかし、誰の姿もそこには見えない。声は、続けて云った。
「アズベリーの血を引く者、今こそ汝の目を覚ますとき。二人の王女は、間もなくして互いを見知る」
声は、本の中から聞こえていることがわかった。あすかは恐怖におののきながらも、恐る恐る投げ出した本を手繰り寄せてみた。
「ア…ズ…ベリー?」
あすかは眉をしかめて、呟いた。
「なんのこと?」
「アズベリーの血を引く王女、アズベリーへの道は開かれる、二人の王女は間もなくして互いを見知るべし」
あすかは手の震えをなんとか抑えながらも、光の漏れるページを恐る恐る開いた。
開いた瞬間、その光の眩さに一瞬何も見えず目が眩んだ。手で光を隠すように、なんとか目を見開いた。
「アズベリーへの道は開かれた、アズベリーの血を引く王女、今こそアズベリーの地へと足を踏み入れるべし」
響いていた声は一層強い口調となり、あすかを圧倒させた。
アズベリーへの道?二人の王女?まったくもって何のことなのかわからない。あすかはその光の漏れるページに、手を触れてみた。