二人の王女(2)
そんな風にして本を吟味していると、ふと本棚の隅っこに隠れるようにして置かれた本が目に入った。
深い青のカバーに、金字で日本語でも英語でもない知らない言語でタイトルらしいものが書かれている。他の本に比べても分厚く、丁重に装丁されている。本の持つ価値などはわからないあすかでも、それはおそらくヴィンテージのものだろうと察しがついた。
「どこの国の本だろう…」
まるでエジプトのヒエログリフを思わせるような、絵のような文字に、思わず首を傾げた。本を棚から取り出し、中を開けてみることにした。
開いた本には、ぎっしりと小さな文字が書き綴られていた。だが、やはりタイトルの文字と同じく、見たこともない文字だった。
―――何の本なんだろう?
ぱらぱらとページをめくってみたが、同じように見知らぬ文字の羅列ばかりだった。童話なのか、そうでないのかもわからない。だが、あるページをめくったときに、黄色く変色した紙の包みがぱらりと床に落ちた。
もとは白い紙だったのだろう。この変色ぶりからすれば、相当な時間が経っていることは間違いなかった。開いてみると、小さなビーズのような丸い粒が三粒、大切に収められていた。
ページに目を戻してみると、文字の羅列の間に、花の絵が模されているのを見つけた。百合のようでもあるし、どこか桔梗をも思わせるような、花。
「この花の種なのかな?…でも、そんな都合よく入ってるはずないか」
そうは思ってみるものの、なんとなくそんな気がしないでもなかった。戻しておこうかとも思ったが、なんとなく気になって、あすかはその包みを鞄のポケットに大切にしまった。
―――もともと放っておかれた本なんだもの、これくらいバチはあたらないよね。
その他のページもぱらぱらとめくっていってみると、ところどころに花の模写と同じような、小さな挿入画があるのに気付いた。しかし、そのどれもが見知らぬものばかりで、その絵だけでは何を示しているのかはわからなかった。
―――この本、どこの国の本なんだろう。
読むことはできないけれど、なんとなく雰囲気が気に入って、あすかはその本を借りて帰ることにした。
他に気になった書物を数冊鞄につめると、あすかは気付かれないように図書室を後にした。
その夜のことだった。