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二人の王女(2)

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 すると、書物の紙に触れるはずの指先には、何も当たらない。それどころか、深く手を突っ込むほどに、手は光の中へと消えていく。まるで、光の向こうに違う空間が広がっているようだった。
 ただただ驚愕して、呆然としていると、再び声が耳元に響いた。
「アズベリーの血を引く王女、今こそアズベリーの地へと足を踏み入れるとき。もう一人の王女は窮地に立たされた」
 ―――アズベリーの地へ足を踏み入れる?この光の向こうは、アズベリーという地に繋がっているというの?
 あすかは状況がうまく咀嚼できずに、呆然とその光を見つめ続けた。何分経ったのか、そうした状態でいるうちに、これは夢だろうと思い始めた。
「これは夢なんだわ。童話の世界の住人になりたいと云った、あたしの見る夢なんだ」
 それならと、あすかは急いでパジャマを脱ぎ、明日の学校に備えて用意してあった制服に身を包んだ。丁度新しくかい直したスニーカーを履き、学校指定のリュック状の鞄から教科書類を出すとポーチなど出掛ける際に持ち歩く物を無造作に詰め込んだ。あの光る紙の包みを入れるのも忘れなかった。
「ここに入ればいいのね?」
 あすかは、本の声の主に尋ねるようにして聞いた。声は云った。
「アズベリーの血を引く王女、今こそもう一人の王女を見知るとき」
 質問の答えにはなっていないような気はしたが、あすかの意志は決まっていた。片方の足を、恐る恐る光の中に突っ込んでみる。やはり、何にも触りはしなかった。この先がどうなっているのかはわからない。しかし、夢ならば何かに繋がっているはず…
 もう迷わなかった。
 あすかは、思い切って光の中に飛び込んだ。
 目の前に真っ白な世界が広がったかと思うと、そのまま急速に落下していくのがわかった。
 自身の悲鳴が耳に響く中、あすかはただ果てを知らぬ空間を急降下していった。
作品名:二人の王女(2) 作家名:紅月一花