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「レイコの青春」 16~18

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 こちらは、『保育事故を繰り返さないために』の著作の冒頭に
【かけがえのない幼い命のためにすべきこと】として
掲載されていたものです。
こちらも、全文をそのままに紹介をします。




 私自身かつて、
子どもを保育所に預けて働く母親でした。
娘が3歳になったとき、延長手続きをしていた失業保険の
期限が切れることをきっかけに、再就職活動を始めました。


 その頃は、人手不足で倒産も出るほどの
労働力売り手市場でしたが幼い子どもがいるということで、
給与などの条件をかなり落としても、就職先は
なかなか見つかりませんでした。


 いくつも面接しては落とされ、
ようやく正社員に採用が決まりました。
さっそく、保育所の申し込みに市役所に行き、窓口で渡された
認可保育所のリストを見ながら片っ端から電話をしましたが、
どこも空きはありません。
ある認可保育所の関係者から教えられた認可外の保育所に電話をすると、
空きがあるということでした。


 そこは、マンションの一室にある保育所でした。
当時、まだ数が少なかった0歳児からの保育をやっていました。
お昼は手作りの食事が出るということで、
月7~8万円という金額はかなりの痛手でしたが、
子どもが幼いうちは自分の将来に投資するつもりでと、
お願いすることにしました。


 何回か慣らし保育をしましたが、親の心配をよそに、
娘は喜んで通ってくれました。
ほっと胸をなでおろしたのも束の間、いざ本格的に預けることになると、
行くのを嫌がるようになりました。
なだめたりすかしたりしながら、なんとか毎日、連れて行きました。


 その保育所はしつけがかなり厳しいところでした。
ひとりっ子で、それまでのびのび育っていたので、
ギャップもあったと思います。
娘の顔からは人懐っこい笑顔が消えて、
大人の顔色をうかがうようになりました。
病気も頻繁にするようになりました。
仕事を辞めることも何度か考えましたが、ここを乗り越えなければ、
この先もずっと働きに出ることはできないと思いました。


 また、就職先では小さい子どもがいる女性を雇うのは
初めてだと言われていました。
私が辞めたら、会社は二度と子どものいる母親を
採用しないだろうという責任も感じていました。


 そして何より、あの頃の私は無知でした。
相手は保育の専門家なのだから、任せておけば安心と信じていました。
本当はいくつか気になることがありました。
特別な行事のとき以外は、親はけっして中には入れてもらえませんでした。
送り迎えはいつも玄関のところで子どもと荷物の受け渡しをおこない、
それ以上は一歩も中に入れません。


 預け始めて数週間たった頃だったと思います。
道端で何かのことで娘をちょっと叱ったら、いきなりその場に座り込み、
両手をついて土下座をしながら必死になって、
「ごめんなさい、ごめんなさい」と連呼して謝ったのです。
そのときはただびっくりして、抱きしめました。


 私はその頃は単純に、
「おじいちゃんが好きなテレビの時代劇でも見て、
真剣に謝るときにはこうするものだと思い込んだのだろうか」
くらいにしか思っていませんでした。