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夢見てばかりもいられない

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[分身]



理或は、机に向かっている。宿題が残っていたのだ。
つい遊んでしまった。いや理或には取って置きのことがある。
「何から始めようかな?」
数学の因数分解。授業の時にはさっぱりわからない。
今もそうだ。
理或はある引き出しを開ける。
書類のように並べられた紙は、熨斗いかのように平面になった理或の人型。
「えっと、どれだっけ?あ、あったーこれこれ。頼むよ」
そういって取り出した一枚の紙のような人型を傍に置いてノートに向かう。
その理或の人型がしゃべりだした。
「それは、こう解くんだよ。はい、次はこうする…」
的確に説明する。実に早く正確に問題を解いていった。
他の課題も同じような調子に、それの知識を持った理或の人型が教えていく。
音楽を聴きたいと思えば、その理或の人型が検索を始める。
まるで理或の人型をしたデータディスクのように分野ごとに情報を処理していく。
「こんなにいろんなこと覚えてなんていられないよ」
「君たちのおかげさ」と理或は人型を出したり仕舞ったり。
部屋のドアが開いた。そのとたんにその理或の人型が部屋中に舞い上がった。
「あー駄目だよ。ばらばらだ。あれ?今していたことはどの人型だっけ?」
「わっわっおじいちゃん、焚き火しないで…」

>>理或は、目覚める!

机の上には深夜までかかったレポートがあった。
いつの間にか開いていた窓からの風。カーテンを大きく舞い上げるほどだ。
理或は、飛び起きて、そのレポート用紙を押さえつけに布団を出た。
「い!たったったぁー……」
机の角で打った足の小指がじーんと鈍く響いた。

作品名:夢見てばかりもいられない 作家名:甜茶