「セックスアンドザシックスティーズ」 第十七話
「吉井・・・久しぶりだなあ」
「門井くん、そうね。成人式以来よね?40年ぶり」
「お前は全然変わらないなあ。みんなで話していたんだぞ。吉井の事、何で綺麗なんだって」
「本当?嬉しいわ、門井くんも想像していたより若く見える。オジサンになっていたらどうしようかって思っていたから・・・」
「うれしいことを言ってくれるね。今どうしているんだ?結婚しているんだろう?子供とか孫は?」
「結婚していないよ。ずっと・・・門井くんはどうなの?」
「そうなのか・・・独身だったのか。だから綺麗でいられたんだ。納得したよ。おれか・・・正確にはバツ一だよ。子供と暮らしている、娘だけどね。
孫もいるんだぞ。年少に今年なったんだ。男の子だけど、可愛いぜ。今はその子がおれの楽しみなんだ」
「離婚したんだ・・・奥様子供さんを残して出て行ったの?」
「違うよ、死んだんだ・・・ガンで、もう10年になるけど」
「そうだったの・・・お気の毒に。知らなかったわ」
「哀しんでばかりいられないから再婚したいっていろいろ婚活パーティーなんかにも参加したんだけど、なかなか縁がなかった。
今は孫がいて娘が一緒に住んでくれているから安心だけど、1人暮らしはいやだったからね。吉井は1人暮らしなのか?」
「うん、両親は亡くなったからそうよ。駅の向こう側にあるマンションに住んでいるの。仕事もしているのよ。今年定年だけど、小さい会社だからまだ勤められるわ。門井くんは仕事してるの?」
「今年定年になって今は嘱託で再雇用の形になっているよ。給料が半分になって仕事は変わらないから割が合わないよ。仕方ないけどね。
年金もらえるまで働かないと苦しいからね」
「そうよね。年金まで働かないとやってゆけないものね。私も同じ・・・身寄り無いから年金だけが頼りになってゆくと思うの」
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 第十七話 作家名:てっしゅう