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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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1977年のカーラジオ

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 まだ二十歳前の僕はカーラジオから流れてくる洋楽を一人で聞いていた。
古いポンコツの水色ワーゲンのビートルはエアコンもなく、夏の湿った風を
ハンドル脇の三角窓から取り入れ、なんとか暑さを和らげるのが精一杯だった。
相変わらずマフラーからは凄い音がしてる。
屋根には6フィートのサーフボードを自転車のチューブでキャリアに止めていた。
お金なんかポケットには小銭しかなかった。
それも、今朝、彼女に小遣いでもらったやつだ。まったくひもなのだ。
ガソリンゲージはまだ4分の1程残っている。これなら今日はひとつ向こうの
サーフポイントまで行けるはずだ。

健太。僕の名前だ。彼女には「健ちゃん」と呼ばれていた。
大学は最近トンと行ってない。バイトで稼いだお金は2ヶ月前に消えていた。
仕送りなんて親と喧嘩した時から入ってきてない。もう、それはいつ頃だ・・
僕はクラスの中で一番おっぱいが大きな女の子に声をかけて、同棲し始めた。
彼女のワンルームマンションはフローリングで僕にとっては豪華で、いつも砂だらけで上がりこんでは叱られた。その彼女が毎朝してくれることは裸で眠っている僕の枕元に五百円玉を置いていくことだった。そのお小遣いが溜まるとポンコツワーゲンにガソリンを入れ、カーラジオを聞きながら海まで走った。そして波乗り。
将来のことは何も考えず、白い波だけを追いながら生活していた。


彼女は陶芸を専攻していた。山口ちえ。皆「ちい」と呼んでいた。
割りと裕福な家庭環境の彼女は同棲を除いては、おりこうさんの女子大生だった。
周りからは「あんな男のどこがいいの」と散々言われてたらしい。
男と女は見えないところで惹かれあうという常識を、まだ若い大学生がわかるはずもなかった。
僕は彼女の何がいいかと言えば、彼女自身が好きだった。飾らない、素直、そして
おっぱいが大きいこと、僕を好きでいてくれること・・。
彼女が僕を好きなとこ・・聞いたことがある。
「みんないろいろ言ってるみたいだけど、なんでおまえ、俺の事好きなんだ?」
彼女は口を尖らせながら
「男っぽいから・・馬鹿だけど」
「はぁ~? そんなに男らしくないし、何にもしてあげてないぞ。
馬鹿は当ってるけど。」
「私、ほかの男って知らないもん。健ちゃんが私の男だから、男らしいと思ってる」
そんな言葉を聞いて、ますます僕はちいの部屋に居座るのだった。