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海野ごはん
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novelistID. 29750
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裸電球

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 機嫌の悪い景子を助手席に乗せるとレストランで機嫌でも直してもらおうと、わりと高級なお店に向かった。とてもこんな雰囲気じゃホテルまでたどり着けない。
景子はレストランでも不機嫌なままだった。お金のない秀治には奮発した店だったのに、ちっとも話に乗って来ない景子を見て秀治は早々とデートを切り上げることにした。
 美人で理想に近い女だが、どうもリズムが合わない。客とマスターの関係ならスムーズに話も進むが、昼間のデートでは何か勝手が違うと言うか、相手の機嫌もあるのかもしれない。景子が秀治を別に求めてないことが手に取るようにわかるのだ。気を使う。疲れてしまう。
秀治はどんな美人でも心が通わないと楽しくないもんだと少し自覚した。
 本当はわかっていたのかもしれない。理想の顔がすべての願いを叶えてくれるわけがない事を。

 気を使うのも嫌だから、秀治は帰りの車の中ではハンドルを握りながら無口でいた。
別にもう話すことはない。景子も何も話すことなく車内は気のない音楽だけが流れていた。
 自分の街に帰ってきた秀治の車が交差点で止まると、向こうのスーパーの駐車場に里恵を見かけた。
「ねえ、ここで降りてもらってもいい?」秀治は景子に言った。
「えっ、ここで?」いぶかしそうな顔をした景子は秀治の方を見ると、何も言わず車から降りた。
信号の点滅で横断歩道を渡る景子を見て秀治は「もう会うこともないな」と思った。
目の前の信号が青に変わると、里恵のいるスーパーの駐車場に入って行った。


「おーい里恵、なにやってんだ?」
「あら、秀ちゃんいいとこ来た。このキャリーが壊れて困ってたんだ」
里恵は安物の金属の荷物運びのキャリーの車輪がガタガタになっている所をいじっていた。
「はぁ~、里恵、おまえこんなの使ってんのか。まるでおばちゃんみたいじゃないか」
「おばちゃんで悪かったわね。スーパーの荷物って重いんだよ」
秀治は車から降りると、里恵のおばちゃんキャリーを見て「ダメだ、コリャ」と言って
荷物ごと抱えて車の後部座席に入れ込んだ。里恵は助手席に乗り込んできた途端、
「あっ、いい匂いがする。女の匂いだ。誰か乗せてたの?」と聞いてきた。
まったく鼻がいいというか、勘の鋭い女だ。
しかし、怒りはしないことを秀治は知っていた。
「ああ、ちょっとな。お客さんを乗せてた」
「ふ~~ん」しばらく里恵は黙っていた。なにかまずかったかな・・・
「ねえ、秀ちゃん。今夜はおいしいよ。すき焼きしよ」里絵の顔はもう微笑んでいた。
まったくこの女は俺の心にすぐ入ってきやがると秀治はハンドルを切りながら、ちょっと安心した気持ちになった。
「さとえ・・・」秀治は声に出して呼んでみた。
「ん?」
「・・・・いや、ただ呼んでみただけだ」
「どしたの秀ちゃん。また、ふられたの?」
「あのな~、おまえ・・・まぁ・・・いいか・・」
    




作品名:裸電球 作家名:海野ごはん