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海野ごはん
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novelistID. 29750
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ひとつをふたりで

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おじさん、誰かあげる人いるの?それとも自分ですんの?」
苛められたお返しに、彼女は少々棘のある質問をしてきた。
「ああ、おじさんは実はオカマだからさ、ホントは自分に買おうかと思ってんだ」
「え~ うそぉ~」
「嘘だよ。嘘に決まってるさ」
彼女はまた白い歯を見せて笑った。
「買ってもつけれないし、自分で持ってたら何か疑われてしまいそうだな」
僕はきれいなピアスがオブジェのようで気に入った。
だけど、車の中や家の中にただ見る為だけに置いといても
他の誰かが見たら、やんならぬ女の忘れ物ぐらいにしか思わないだろうし
いらぬ噂を立てられるのがおちだ。

「ちょっと待ってて」彼女は僕が手に取っていたピアスを取り上げると
じっと見て
「おじさん携帯持ってる?」と聞いてきた。
「ああ、持ってるよ。今の世の中必需品だ。ホントはいらねーけど」
くすっと笑い、彼女は「携帯ストラップにしてあげようか?かわいいよ」
「すぐ出来るの?」なんとなく完璧なデザインの形が崩れるのは嫌だったが
何かの縁だし、そう高くないだろうし、何より彼女の笑顔がさわやかだった。
彼女はそう聞くと、返事も待たずに器用にペンチをいじり出した。
後ろに置いてあったプラスチックの箱を開けると、
いろんな小さいパーツごとに別れた
見事に本格的なアクセサリーキットが目の前に現れた。


彼女はいくつかのデザインされたストラップのうち、
白い携帯用のストラップを手に取り、
先ほど僕が目を奪われたピアスと合体させた。
二つセットのピアスが、二つの携帯ストラップに変身した。
時間は5分もかからなかった。
「二つもいらないよ。携帯は1個しか持ってないし」そういうのもお構いなしに
彼女は「誰かいい人見つけて、あげてください」と商売上手だ。

「ハイ、出来上がり。おじさん携帯貸して」と手を差し出す。
僕は言われるままに携帯を渡した。
角の小さい丸い穴に器用にストラップの紐を通す。
さすが、まだ若いから簡単に紐を通せる。
最近は老眼のせいで、そういう仕事は時間がかかった。
「ありがとう。なんだか可愛いすぎないかい?」
「夏だからいいんだよ~」
なんとも、頼りない答えだ。だけど気分がリフレッシュした。
先ほどまでのエアコンが効いてない役所のビルの中で、
イライラしてたのが吹き飛んだ。
「いくらなの?」
「2000円。高い?」不安そうに聞いてくる。
「ハハハ、高いといえば高い。安いといえば安い。君のママの手作りと思ったら安いのだろうけど、相場を知らないから、一応高いと言っておこう」
「じゃ、1500円・・」
僕はまた笑ってしまった。
あれだけ商売っ気があったのに、お金を貰う段になったら遠慮している。
素直ないい子なんだなと思った。
「2000円でいいよ。その代わりもうひとつは君のママにプレゼントしてあげてくれないか」
「え~、ヘンなおじさん。私のママを知ってるの?」
「知らない。だけど知らない人と同じもので結ばれてると思うと嬉しいんだ」
「・・・わかった。おじさん寂しいんだ」
いきなり、少女のような彼女に指摘されてドキッとした。

作品名:ひとつをふたりで 作家名:海野ごはん