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紗の心

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家に戻ったその人は、たぶん『あの方』と一緒に居るのだろう。
何もないとは言っていたが、男と女がひとつ屋根の下にいるわけだ。
まるっきりなにもないと言い切れるだろうか?
少し情に絆された私だったが、やはり気に掛かる。
汚い言い方をするなら(相手は、どんな奴だ?)といったところか。
かといって、私はその人の何でもない。
キスをした。抱きしめた。それだけだ。
その人の真意など、何もわからない。
金持ちの相手に飽きて、少し戯れる相手が欲しかったのかもしれない。
もしかしてあちらの満足を満たすためにとか?
それなら、もっと若い肉体がいいのでは、と自分自身を悲観してしまうことすら
想像してしまう。

フロントガラスに雨粒が落ちてきた。
雨の街中を意味なく走った。
信号が変わらないままに真っ直ぐに走った。
小道に入ったばかりに一方通行でどんどん奥へと進んでしまったり、思い通りにならないことに、やり場のない憤りを感じた。
雨足が強まってきた。
むやみに走るのは危険もある。
冷静になれた。
私は、家へと向かった。
信号待ちで妻に電話を入れた。
傘がなく、駅からどうしようかと思っていたらしい。
駅前で待ち合わせることにした。
私のほうが早く到着したようだ。
数分待つことになったが、駆け寄ってきた妻を見ると微笑ましかった。
「良かった。ありがとう。崇さんも用事は済んだの?」
「ああ。このまま家に帰る?それとも寄りたい所はある?」
「お腹は空いてないけど、どうしようかな?」
(そういえば、私のほうが朝も昼も食べてないな。少し腹が減った)
「まだ、昼を食べてないんだ」
「そうなの?じゃあ・・何か食べてく?家に帰ってもすぐには食べれないもの」
久し振りにファミリーレストランへ入った。
昼の時間から過ぎているにもかかわらず、時間つぶしか、長居をしているのか、
わりと混んでいた。
とりあえず席には座れた。
妻は、デザートを注文した。
食べて間がないと言っていたのに、これが(ベツ腹)というやつか。
私は、早いだろうとオムライスを頼んだ。
「久し振りの友達はどうだった?」
「うん。彼女離婚したんだって。大変そうだったけど、元気だった」
「ふーん」
「一番、家庭が似合ってる子だと思ってたのに。わからないなー」
「どうしたんだろうね」
「旦那さんの浮気とか、あの子に好きな人ができたとかじゃなくて、もっと気持ち的な
ことみたい。いろいろ話聞いたけど、夫婦の事は、本人同士じゃないとわからないわね」
「夫婦喧嘩は犬も食わないってか」
「そういう感じ」
店の女の子が料理とデザートを運んできた。
妻は、嬉しそうに食べた。
私もデミグラスソースのかかったシンプルなオムライスだったが、なかなか美味しいと
思った。
さきほどの店の女の子が慌てたように小皿に盛られたサラダを私の前に置いた。
どうやら忘れていたらしい。
別にどちらでもよかったが、得した気分だ。
食べ終わり、雨が小降りになったので店を出た。
家に着く頃には、もう上がっていた。

作品名:紗の心 作家名:甜茶