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なっちょん
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novelistID. 25113
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片山レンジャー 前編

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「あ...」

 瞳が、濡れている。

 気がついた時、恵子ちゃんの目前はうぐいす色だった。

 うぐいす色の彼が抱きしめていたのだ。

 かなりの時間が経っても、自分の傷は大きかったらしい。

 柄にも無く、取り乱した自分が恥ずかしい。しかも、嫌っている筈のヒーロー相手に。

 ただ、眼前の胸板は異常なほど厚く、背に回されている腕は、吃驚するほど太い。見事な体格であった。

「ぷっ、くくっ」

 しかし、うぐいす色のスーツと、言動のへっぽこ振りが作り出すアンバランスさ。何故か可笑しくなってきた。恵子ちゃんは片山レンジャーの腕を軽く叩いて言う。

「不思議ね、あんたのへっぽこ振りを見てたら、大丈夫になっちゃったわ」

 彼は腕を緩める。

「あの、僕、は、えっと...」

 額の上で、相手を思って自分は何も言えない。それでも何か言いたくて、言葉を探してじりじりする姿が動く。ちょっと可愛い。

「変に、気を使わないで良いわよ」

 恵子ちゃんはやっと笑った。