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なっちょん
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novelistID. 25113
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片山レンジャー 前編

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 雨が降っていた。

 幼い恵子は身重の母と歩いていた。

 お気に入りの赤い傘が二つ、ゆらゆらと踊る。

 最近のマタニティドレスについて、嬉々として話していたと思う。

 母は良く笑う人であった。



 それは、突然起きた。

 怪人が現れ、母を拘束した。

 怪人は傷だらけで、体液が母を汚す。

「この女の命が...」

 言葉は、後ろからの斬撃で遮られた。

 何かのヒーローである。

 現行法では、人質を取られた場合、ヒーローは武器を捨てねばならない。

 人質となる前に敵を倒すのは定石だった。

 恵子が気づいた時には、ヒーローが三十人近く、怪人と、母と、お腹の子供を取り囲んでいた。

「止めて!!」

 小さな手を、伸ばした筈だ。

 しかしヒーローの攻撃はやまず、もがく怪人が母を盾にするのは、必然と言えた。




 雨が降っていた。

 お気に入りの赤い傘が一つ、無惨な姿となっていた。

 身重の母は、動かない。

 ヒーロー達はもう消えた。

 母達も、また。