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 但し、やはり最愛の妻と共に生きて行くことが理想だった。由美とイーゼルを並べながら生きて行けるとしたら、ほかに何が要るというのか。
「約束をしようとか?由美ちゃんはいい女だからねぇ。待ってるかも知れないよ……で、いつ行く?」
「明後日よ」
 中野は殴られたような衝撃を覚えた。
「そ、そういうタイミングで、奇跡的に再会したんだ」
 また電車が来た。あと何本待てば良いのだろうか。待ち時間はあと三十分を切っただろうか。
「あるのね。こういうことって。山崎先生に清さんの家を教えて貰おうとしてた。清さんに会いに行こうかなんて、本気で考えていたのよ。だから、ここで会えてよかった」
 絵画教室で教えているのが山崎健三という画家である。
「あの人は相変わらずエネルギッシュなんだろうなぁ。ニューヨークの個展が大好評だって、昨日立ち読みした美術雑誌に出てたよ。あっ、そうか、今も向こうへ行ってるんじゃない?」
「今度の木曜日に会うんですよ。清さんのこと、云っておきます」
「そうですか。よろしくお伝えください……由美ちゃんも、そのうち海の向こうで個展だな」