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過去からの訪問者(6月4日変更)

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「なぁんか、自殺願望があるんじゃない?不幸なの?」
 騒音と共に電車が入ってきて停止した。まだそんな時間ではないのに、中野は車内を覗き込んだ。
「まあ、顔はいいけど頭が悪いからね」
「そうそう。清さん、いい顔してる」
「冗談通じないの?ひどい顔だよ。これじゃあモテるわけないよ」
「ええ?知らないの?清さんのファンはたくさんいたよ。その代表がわたし」
「こんな貧乏人持ち上げたってなんにも出ないよ。くだらない冗談はやめよう」
「……わたし、本当に清さんが好きだったのよ。でも、子供だから相手にされないわって思って、諦めたの」
 あの頃由美は十八歳、中野は二十四歳だった。云われてみれば確かに当時の由美は子供っぽさが目立っていた。ある日、帰宅するバスの中で、紅い糸のようなもので繋がっているような気がすると、高校の制服姿の由美が云ったのを中野は思い出した。
 由美には云わなかったが、彼にはその頃交際中の相手がいた。その娘と別れて由美に乗り換えようかと、暫くは悩み続けたものだ。そんなことも忘れていたとは、驚異的な頭脳だと、中野は自らに対して呆れた。
「諦めて、今はカレシがいるんだね?」