過去からの訪問者(6月4日変更)
由美は学校帰りに制服で教室に通っていた。
「憶えてたの?高校生のときも同じことして、絵の教室で笑われたのよね」
「だけど、あんなこと自分からバラして、ひとがいいというかなんというか」
「でもぉ、清さんもあの頃電車に忘れたって、云ってたじゃない」
「嘘だぁ。それ、本当かい?」
電車が入って来たので中野はまた声を張り上げなければならなかった。
「清さんがそんなこと教室で云うから、わたしも告白したのよぉ」
薄化粧の由美は如何にも気分を害されたという表情だ。
「あちゃぁ。そうだっけ。そのくせ今日も忘れるなんて、俺って超抜作だなぁ」
「ええ?清さんも?だから、だからここで電車を待ってるの?」
由美は事情が判ると無遠慮に笑った。つられて中野も一緒に笑った。
「実はそうなんだ。ばかだねぇ。電車に轢かれて死のうか」
「ええ?こんなところで心中?やだ、そんなの」
由美の声が高かった。通り過ぎる人や、周囲に居た人たちが二人に批判的な視線を集中させている。
「そうかぁ。じゃあ、思い直すよ」
「なぁに?本気だったの?」
作品名:過去からの訪問者(6月4日変更) 作家名:マナーモード