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「あっちに住んでたから、自転車で通った」
「どんな絵になったの?」
「夕焼けの空と、それを映す川の絵。遠景の山の連なりを、由美ちゃんのそのスカートのような色で描いたな」
「その絵、まだある?」
「押し入れの奥の方にあるかな?」
「見たいわね。その絵。あっ、来たわ、電車」
「あれか?」
 モーターの音と車輪がレールを叩く音、ブレーキの音を響かせながら、緑色の帯に巻かれたステンレス製車両が入って来た。慌ててベンチから男女が立ち上がり、電車に向かって歩いた。目の前を少し通過して停止した電車の先頭車両の中の網棚に、二つの絵の具箱と合計四枚のキャンバスが置かれていた。二人で開いたばかりのドアから車内に入り、忘れ物を取った。それが済むと二人はすぐに車両から出た。乗客の殆どが中野たちを見ていた。
「由美ちゃんのはすぐ傍に置いてあったね」
「わたしは新橋から乗って、清さんの隣に座ったのよ。そこだけ空席だったから」
「こっちは有楽町から乗って、本を読んでいたんだ」
「夢中で本を読んでいたから、だから声をかけなかったの」
「ちょっと意地悪じゃないか。乗り過ごしそうになったよ」
「清さんは渋谷の方へ行くのかと思ったし、わざとわたしに気がつかない振りをしてるかも、なんて思ったの。おかげで忘れ物しちゃった」