アトリエの恋
「高校受験のための教材を〜売ってるんだって?〜だったら私は先輩だよ〜」
アオちゃんだった。
「そうなんですか?」
餃子と野菜炒めがきた。阿坂はまた靴を履き、厨房から小皿を四個持ってきた。
餃子のたれはテーブルの上の酢、醤油、ラー油を小皿で調合する。それをさやかがやってくれた。
「北川って〜人と一緒に〜ちょっと前まで〜やってたんだから〜」
「へえ。北川さんと一緒に。ところでアオちゃんの名前は青木さん?」
「私の〜名前は〜青島〜です〜」
「そうか。青島さんなんだ。じゃあ、昔都知事をやってたでしょう」
「冗談が〜きつ過ぎ〜ます〜あのかたは〜とっくに〜死んでしまいました〜」
「ちょっと酔ったかな?」
阿坂は云ったことを反省した。
「アオちゃんはあと五十年、頑張れますよね」
さやかがそう云うと、
「それは〜ひど過ぎます〜私は〜あと〜五十一年頑張り〜ま〜す〜」
それを聞いたほかの客たちもどっと笑った。
「わたしも失礼なことを云ってしまいましたね。ごめんなさい」
「さやかさん。ラーメンは食べられる?」
と、阿坂。
「そうね、半分くらい食べたいわ。浩樹さんと半分づつ食べましょう」