アトリエの恋
「おい、一番いいコニャックとグラスを出してくれ」
「残念ですね。車で来てしまいました」
「そうですか……では、教材のほうを見せて頂きましょうか」
阿坂は早速テーブルの上に二つの箱を並べた。箱の中から出したものはポータブル型の
テレビゲームに似ていた。
「これに日付と学年、学校名、教科を入力しますとテスト問題が十問出題されましてね、
回答すると採点結果が表示されます。満点のときはファンファーレが鳴るので更にほかの問題を解きたくなるわけです」
「面白そうですね。私もやってみたくなりましたよ」
画家は驚いたあと、嬉しそうな顔になった。
「こちらには効率的な勉強のできるテキストが入っておりますので、予習、復習ができます。如何でしょうか」
「これじゃあ勉強嫌いでもやりたくなるなあ。
お前どう思う?」
老人は相変わらず笑顔で妻に訊いた。
「わたしもやってみたくなりましたよ。孫に見せるのが愉しみだわ。あら、ちょうど帰って来た」
玄関の方から物音が聞こえた。老夫婦は声を揃えるように孫の名前を呼んだ。紺色の制服姿の娘が笑顔で入って来た。
「ちょっと来なさい。じいちゃんとばあちゃんから優奈にプレゼントだ」
なかなかの美少女だった。
「なあに、プレゼント?」
「ちょっと座って、おにいさんの説明を聞きなさい」
「はい。じゃあもう一度最初からご説明させて頂きます」