アトリエの恋
「このまま朝まで居たいね」
「一生でもいいわ……でも、明日はお仕事なの」
「そう。じゃあ、家に帰らないとね」
「ええ、帰らなくちゃ。ミュウが待ってるし……」
「子猫だね。可愛いだろうな」
「見せてあげたいわ。凄く可愛いの」
「会いたいけど、帰るよ」
阿坂はさやかを抱いて口づけをした。どうしてなのか、もう二度と逢えないような気がした。水の音が聞こえた。
「あっ!捕まえた」
「アオちゃん?本当、咥えてる」
アオサギは天を仰ぐとその魚を飲み込んだ。細い首が太くなった。
「こんな時間に鳥は働いていたんだ」
「偉いわね。拍手」
二人で控えめに拍手をした。
「さて、帰ろう」
「明日の夜、電話するね」
「うん。待ってる」
阿坂が立ち上がった。さやかも立ち上がった。二人は手を繋いで歩いて行った。
「あの工場。家なの」
「えっ。そうか、何を作ってるの?」