アトリエの恋
「それはもう過ぎたことだし、新しい仕事で頑張って」
さやかだった。
「じゃあもう一度、阿坂君の輝く未来に乾杯しよう」と、村田。
雪奈が笑顔で云った。
「そうよ。阿坂さんいい仕事みつけて、頑張ってね」
全員で乾杯してくれたものの、阿坂は力なく笑っただけだった。
「阿坂さん。次の仕事が決まるまで月謝は免除するからここには通ってくれよ」
梅田が真剣な顔で云った。
「いいんですか?……じゃあおことばに甘えさせて頂きます」
阿坂は感動していた。
「先生。ありがとうございます」
そう云って涙ぐんだのはさやかだった。阿坂は更に嬉しい気持ちだった。
「二人の関係はもはや夫婦同然かな?」
と、樫村が明るく云った。
*
駅前の飲み屋街の中の店だった。そのお好み焼き屋の座敷で、阿坂とさやかはまたビールを飲んでいた。暗くて静かな店だった。スポットライトが鉄板を照らしていた。
「ねえ、この前の会社はなぜ駄目だったの?」
さやかは明るさを失っていた。