アトリエの恋
制作の時間が終わって全員が座卓を囲んだ。
「今日は納涼ビアパーティーだよ。缶ビールだけどね」と、梅田が笑う。
さやかと雪奈が奥の冷蔵庫から五百ミリリットル缶を七本出してきた。ポテトチップスなどの袋も開けられてから、全員で乾杯した。
「阿坂君。尋き忘れてたけど、東北地方はどうだった?」
そう云った村田は東北出身だった筈だ。
「爆発的な春でしたね。きれいでした
さくらが咲いたときの感動が違いました」
「今頃は向こうも暑いだろうね」
樫村が眼鏡を拭きながら云った。
「ところで、阿坂さんの会社はどうして倒産したのかね」
武井が天井に眼をやりながら云った。
「……フランスからミニラボという機械をたくさん買って来たんですよ。それが全部不良品でした」
「返品はできなかったの?」
雪奈が訊いた。
「それを作った会社も何年か前に潰れているんです。それだけじゃなくてドイツとイギリスに輸出した現像機が火災の原因を作ったり、自社開発の大型焼き付け機がうまく動作しないで出荷できなかったとか、いろいろ重なって、銀行からの融資も止まってしまったんです」
「悪いことが重なったんだね」
と、梅田が珍しくしんみりと云った。