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アトリエの恋

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「もっと大きいのを釣ってからよ」
「キスを釣ったら、キスができるわけね」
「そういうこと」
 その後一時間以内に漸く阿坂が二十センチ以上の大物のシロギスを釣り上げた。さやかはそのあと間もなくベラを釣ってしまった。ベラというのは緑と朱色の横縞がきれいだが、
食用には適さない。似た魚のキュウセンは関西では珍重されるらしいのだが。
 ベラが釣れ出すとシロギスは釣れなくなる。
「岩場の上に移動してアイナメを狙ってみよう」
 アンカーを海底から引き上げるのは大変だった。それは、コンクリートの塊なので重いのである。
 その厄介な作業が済んでやっと阿坂は漕ぎ出したが、潮の流れがあるのでなかなか思い通りには進むことができない。全部で一時間かかって漸く移動が完了した。
「もうお昼ね。おなかすいたでしょう」
「今日も御馳走かな?」
 阿坂はにこにこしている。
「海で食べるとお握りはおいしいのよねぇ」
 笑顔のさやかはクーラーボックスの上にタッパを三つ並べて蓋をあけた。
「山でもおいしかったけど、海でもおいしいよね。えっ?!凄過ぎるよ。今日も」
「エビが好きだって云ってたから塩焼きね。アスパラガスのベーコン巻きと、しし唐の牛肉巻き、それから細切り牛肉ピーマン炒め」
作品名:アトリエの恋 作家名:マナーモード