アトリエの恋
「凄―くわくわくしたわ」
「来た!」
阿坂は合わせた。ぐっと引き込まれた。小刻みな振動を感じている。
十五センチのシロギスは美しいパールピンクの魚体を躍らせながら漸く上がって来た。
阿坂はそれを針から外して海水を入れてある青いポリバケツの中に入れた。
さやかは嬉しそうにバケツの中の魚を覗き込んでいた。阿坂はさやかの仕掛けに餌をつけてやった。
海に落とすとすぐ、
「あっ!凄い!元気ね」
さやかは笑っている。今度は針にかかったらしい。
「どんどん巻いて!」
「大物よ!凄い」
上がって来たのは二十センチに近いシロギスだった。
「わあ!やったぁ。勝った」
「負けた!よおし、頑張るぞ」
その後一時間も経って釣り上げたのは、さやかだった。
「三回餌を取られたよ。景気づけに一杯やるか」
悔しそうに云った阿坂は、クーラーボックスから冷えたビールを出した。
「わたしも。祝杯」
「こっちはやけ酒だぁ」と、云いながら男はさやかにも冷えた缶を渡した。
「ありがとう」
麦わら帽子の下のさやかの顔は、最高の笑顔である。
「今日はまだキスをしてないから駄目なんだ」