アトリエの恋
「決定だね。五時半まで温泉三昧」
渓流を眺めながらの露天岩風呂に阿坂は感激した。だが、地元の人らしい三人の中年男たちの方言は、阿坂にはよく聞き取れなかった。右手の人差し指を立てていたらトンボがとまった。
広い休憩室へ行くと、家族連れなどがにぎやかだった。阿坂は新しい畳の香りを心地よく感じた。販売機から買ってきた冷たいビールをまた飲んでいると、登山服から着替えた上機嫌のさやかが歩いてきた。彼女のショートパンツ、Tシャツという姿に阿坂は眼を奪われた。
彼女も冷えたビールの缶を持っていた。
「登山のあとの天然温泉は最高ね!」
さやかは阿坂のすぐ隣に座った。濡れた髪の香りも、阿坂を興奮させた。それを隠すように阿坂は尋いた。
「初めての登山はどうでしたか?」
「大変愉しかったわ」
云ってからさやかも缶を開けて勢いよく飲んだ。
「さて、次の初体験は何かな?」