アトリエの恋
その先の急な下りの路は、縦走する道中では一番厭気が出てくる所だった。 それを耐えるとあとは無理なく下って行ける路だった。
反対側の登山口のバス停までの最後の区域は、強烈な太陽光を浴びながらの長い道のりだった。
漸く辿りついた麓の集落のバス停前の酒屋で、できたばかりの日帰り温泉の情報を得た。ふたりは渓流で脚を冷やしながら冷たいビールを飲んだ。
「ビールって、こんなに美味しいものだったのね!」
「これを飲むために生きてきたような気がする」
登りの路を二十分程行くと、立派な村営温泉施設があり、大型バスが一台と数台の乗用車が駐車場に入っていた。玄関を入ると、入り口にはキノコや農産物が並べられていた。
「ここは何時までですか?」と、阿坂。
「朝十時から夜八時まで入れますよ」
管理人の老人が笑顔で応えた。
「最終バスは六時だけど、あと三時間近くあるわ」
さやかは力んで云った。