アトリエの恋
第2章 異空間
ドアを開けると玄関の先がアトリエだった。その広さは二十畳大で、床はフローリングだった。
「さやかちゃん。珍しく遅かったね」
笑顔の絵画教師は意外に若い感じだった。体格が良く、柔道でもしていそうな雰囲気である。髪型は普通のサラリーマン風だが、やたらと原色がちりばめられた派手なシャツ、
そしてジーンズという服装だった。
「こんばんは。画材のお店に寄ってきたんです」
さやかは靴を脱いでスリッパに履き替えながら云った。既に五人の男女が椅子に座り、キャンバスに向かっている。
「そうだったの。あれ?そちらのかたは?」
制作中だった五人が一斉に振り向いた。
「こんばんは。阿坂と云います。見学をさせて頂きたいんですが、よろしいでしょうか」
玄関から阿坂は云った。
「見学ですか。描きに来られたのかと思いました」
「たまたま持っていただけなんです」
阿坂は絵具箱のベルトを肩から外した。