アトリエの恋
「そういうことですか。そんな年齢には見えないので、不思議に思っていました」
「私の年齢は二十六ですよ。あなたは……二十三くらいかな?」
「二十六?そうなんですか?あなたも二十三歳くらいにしか見えませんね」
「巧く切り替えましたね。でも、年齢なんてね、どうでもいいことです。但しどれだけ頑張って生きて来たか。それこそが問われるところですね。そう、思いませんか?」
さやかは眼を輝かせた。
「そのとおりです。四十歳、五十歳になっても子供みたいな人ばかりで、頭にきてます」
「そうですか。詳しく聞きたいなぁ。こういう話になって来ると、絵の教室へ行くよりも居酒屋へ行ったほうがいいような気がしますね」
「何を云うんですか。ちゃんと月謝を払っているのに、サボってそんなところへ行くほどバカじゃありません」
「失言でしたね。ごめんなさい」
暫くの沈黙のあとでさやかが訊いた。
「ところで阿坂さんは何年くらい油絵を描いているんですか?」
「私は十年選手ですよ。今までに描いた油絵は百五十点くらいにはなるでしょうね」
「大きいのも描かれるのかしら」
「通常は四十号までですね。五十も、百も描いたことはありますけどね」