アトリエの恋
あっと云う間の一時間半だった。驚きのために卒倒する人も出るのではないかと心配になる程に、超大仕掛けのスターマインの大迫力が最後を締めくくった。
一斉に見物客が立ち上がった。阿坂とさやかと老夫婦は協力し合ってあと片づけをした。
「ありがとうございました。ご縁があったら来年も一緒に愉しみましょう」
遠くからの投光器の光を受けて見合わせた笑顔が輝く。
「そうですね。来年もぜひ、観に来たいものです。生きてたらね」
老人はそんな冗談を云った。
「そんなことを云わないでください。まだまだお元気じゃないですか!来年のために奥様と連絡先を交換しましたからね。ありがとうございました」
さやかの真剣な顔に、老夫婦と孫たちは笑顔で応えた。
阿坂とさやかは手を振り、老人たちと別れて歩きだした。公園沿いの道路は大変な混雑になっている。
「いい人たちだったわ。浩樹さんもね」
「さやかさんと一緒に観たせいかな。今までで一番きれいな花火だったよ」
「来週は登山初体験ね!待ち遠しいわ。あっ!わたし、足元がふらついてる。飲み過ぎたのね」
「もっと飲ませれば良かったかなぁ」
阿坂はさやかを抱きしめたいと思っている。それは、雪国の工場でも思っていたことだった。チャイニーズドレスのさやかに、阿坂は夢の中で何度も口づけをした。