アトリエの恋
「多分、大丈夫よ。わたしね、まだ流れ星を見たことがないの。山の上なら見えるのよね」
「見えますよ。とびきり上等のがね」
「本当?だったら、願い事、考えておこうね」
「とびきり上等の願い事を思いついたよ」
「早いのね。どんなこと?」
「さやかさんを幸せにさせてください」
「浩樹さんを幸せにさせてください」
二人は凝視め合って微笑んだ。そして、手を繋いで人ごみの中に入って行った。
茫然とさせられる人の集合だった。狭くはない公園内にぎっしりと人が詰め込まれている。午後五時の気温はまだ三十五度に近いだろう。風はあるのだが、汗が止まらない。
見たところ圧倒的に若い世代が多い。
浴衣姿の女性は珍しくないのだが、さやか程に清楚な美しさを感じさせる女性は、
これだけ集まった中にも見当たらなかった。老若男女を問わず、さやかの姿の価値に気付いた者は、どうしても眼で追わずにはいられない。
可愛いという声が大多数だった。(これだけ可愛い娘は滅多にいない)阿坂も改めてそう思った。何度も声をかけられた。
「こんにちは。ここに座れますよ。よかったらどうぞ」
そんなことばに対してさやかは、
「ありがとうございます。夫と一緒でもいいんですか?」
「失礼しました。気がつかなかったもので……」
「座れますよ。どうぞ。二人来れなくなったんです」