アトリエの恋
「教室、二回続けてさぼったね」
「新しい機械の手直しが難しくてね、ずっと残業だったんだ。徹夜もあったりして、大変なんだ」
「無理して身体壊さないでね」
「ありがとう。なんとか元気だから、心配しないで」
「去年の夏から描いているって云ってたのよね。どこにあるの?」
「それ、三箇月も前に云ったことだよ。憶えてくれていたんだね。ありがとう」
「夕方の港の風景って云ってたわね」
「そうだよ。じゃあ、ついて来て」
阿坂の絵を見たさやかは、間もなくまぶたから涙を溢れさせた。それは阿坂が想像していたことだったが、現実に彼女の涙を見ると、阿坂の感動は想像を超えるものだった。
阿坂も涙を流していた。
「ありがとう」
「賞を頂いたのね。それとは関係なく、すてきよ。いい絵ね」
「本当に?」
「ええ。凄く気に入ったわ。描いたところに連れて行って」
「うん。いつか、連れて行くよ」