アトリエの恋
さやかはテーブルの上に力作を並べた。
「ヤッホー。最高だね。今日もおいしそうなものばかりだ」
「本日のお献立は、ほうれん草の胡麻風味炒め、巣ごもりつくね、チーズ入りビーフロールカツ、さわらのゆず風味焼き、エビのシソ巻きフライ。以上でございます」
さやかは自信たっぷりといった様子だ。
阿坂はまた眼を潤ませながら昼食を摂った。どの料理にも愛情が感じられた。苦しいくらいに満腹になってしまった。そして、大満足だった。
「まさかとは思うけど、徹夜で作ってくれたの?」
「昨日の夕方から下準備をしておいて、今朝は三時から揚げたり焼いたりしたのよ」
「感動だな。さやかさんをほかの男に取られたくないよ」
「わたしも、浩樹さんを誰にも渡したくないわ」
その後、二人は一時間以上も移動して湖があるところへ行った。
畔の植物園を観てまわったり、土産物を見たり、美術館の中を歩きまわったりした.
そのあと、手漕ぎボートを借り、紅葉をきれいに映す湖上に出た。
二人は微笑みながら爽やかな風に吹かれた。やがて、夕陽が水面を微かに染め始めた。
「子供の国籍の件だけど……」
「憂鬱な話ね」
さやかの表情が曇った。
「解決策はたくさんありそうだよ。最も簡単なのは、両親が同じ国籍になればいい……
何でも前向きに考えよう。どんなことでも必ず打開策はあるものだよ」
「そうよね。やっぱり浩樹さんは素晴らしいひと」
さやかは明るい笑顔になった。